「ソフトバンクの株価は、なぜこんなに安いんだろう」——2026年3月期の決算は全セグメントで増収、売上高・営業利益とも過去最高なのに、そう感じて検索した人もいると思う。 投資系メディアでは「通信事業が成熟している」「親会社と混同されやすい」「AI投資の不確実性を市場が警戒している」といった見方がよく語られる。 ここでは、そうした一般的な見方と、決算短信・IR公式ページで確認できる事実を、はっきり分けて並べていく。 止めもしないし、押しもしない。 ソフトバンク株式会社(証券コード9434)は東証プライムに上場する正規の通信キャリアで、詐欺やトラブルの話ではない。 株価が安いと言われる理由を、確認できることとできないことに分けて、淡々と整理しておきたいだけだ。 なお、この記事は特定銘柄の売買を勧めるものではなく、株価水準を断定するものでもない。 数値は日々変わるので、最終的な判断材料は自分自身の目で最新の開示情報を確認してほしい。
ソフトバンク株式会社(証券コード9434)は2026年3月期に全セグメントで増収となり、売上高・営業利益とも過去最高を更新した。 それでも株価が「安い」と語られる背景や、親会社ソフトバンクグループ(9984)との混同が起きやすいポイントを、決算短信・IR公式ページなど公開情報でタダシが中立的に整理する。
この記事の目次
結論:業績は伸びているのに、株価は割安に見える
結論から言うと、決算の中身は素直に伸びている。 ソフトバンク株式会社(証券コード9434)は、2026年5月11日に「2026年3月期 決算短信(IFRS)」を公表した。 内容を見ると、全セグメントで増収となっている。 売上高・営業利益・親会社の所有者に帰属する当期利益は、いずれも過去最高を更新した。
会社側の予想も、2027年3月期にかけて増収増益を見込んでいる。 売上高は7,500,000百万円(前期比+6.6%)、営業利益は1,100,000百万円(+5.5%)という水準だ。 それでも、この株は「割安」と言われることがある。 このギャップの中身を、ここから公開情報で確認していく。
先に断っておきたいことがある。 この記事は、「買い」「売り」を判断するものではない。 ソフトバンク株式会社は東証プライムに上場する正規の通信キャリアであり、詐欺やトラブルの話ではない。
業績と株価の印象にギャップがあるとき、そこに注目したくなる気持ちは、タダシにもよくわかる。 ただ、ギャップの中身を仕分けずに『安いから買い』『安いから危ない』と即断するのは、まだ早いと思う。
- 売上高:7,038,680百万円(前期比+7.6%・過去最高)
- 営業利益:1,042,576百万円(+5.4%・過去最高)
- 親会社の所有者に帰属する当期利益:550,759百万円(+4.7%・過去最高)
- 2027年3月期の会社予想:売上高7,500,000百万円(+6.6%)、営業利益1,100,000百万円(+5.5%)
観点をそろえる:「安い」の基準とPER・PBRの見方
ある銘柄の株価が「安い」かどうかは、見る基準によって意味が変わる。 過去の高値と比べて安いのか、それとも利益や資産に対して割安(PERやPBR——株価が利益や純資産の何倍かを見る指標)なのかは、混同しないようにしたい。 「安い」のひとことにも中身がある——ここを揃えておかないと、この先の話が全部ぶれてしまう、とタダシは思っている。
個別の株価水準や指標の倍率は日々変動するため、この記事では具体的な数値は示さない。 PER・PBRといった投資指標や有価証券報告書は、金融庁のEDINET(開示書類閲覧システム)や日本取引所グループ(JPX)で、誰でも確認できる。 「今日の決算まとめ」に出てくるPER・配当利回りなどの数字の意味そのものは、「今日の決算まとめ」のPER・配当利回り・時価総額は何を表す?数字を自分で確かめる確認ポイントでも整理している。
ここでもう一つ、押さえておきたい前提がある。 ソフトバンク株式会社(9434)は東証プライムに上場する正規の通信キャリアで、親会社であるソフトバンクグループ(9984)とは別の銘柄だ。 金融庁が公表する無登録業者リストとはまったく無関係な、正規の上場企業であることも確認しておきたい。
- 「安い」の基準(過去の高値との比較か、PER・PBRなどの割安指標か)をまず区別する
- PER・PBRなどの投資指標や有価証券報告書は、EDINETやJPXで確認する
- 9434(ソフトバンク)と9984(ソフトバンクグループ)は別銘柄であることを押さえる

①業績の実態を決算短信で確認する
まず確かめておきたいのは、業績の実態だ。 ソフトバンク株式会社は、四半期ごとの決算短信をIR公式ページの「決算短信」ライブラリで公表している。 タダシが実際に開いたのは、2026年5月11日付で公表されたソフトバンク株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」だ。
この決算短信によると、2026年3月期は売上高が前期比7.6%増で過去最高を更新した。 営業利益・税引前利益・当期利益もそろって前期を上回り、全セグメントで増収という結果になっている。 具体的な数値は、次の通りだ。
来期(2027年3月期)についても、会社は増収増益を予想している。 とはいえ、報道や要約サイトの数値をそのまま使うのではなく、決算短信の原本で確かめておきたい。 数字だけ見れば、むしろ好調そのものだと思う——だからこそ『それでも株価が安いと言われる理由』を次に整理しておきたい。
- 売上高:7,038,680百万円(前期6,544,349百万円から+7.6%、過去最高)
- 営業利益:1,042,576百万円(前期989,016百万円から+5.4%)
- 税引前利益:930,022百万円(前期880,057百万円から+5.7%)
- 当期利益:726,623百万円(前期655,286百万円から+10.9%)
- 親会社の所有者に帰属する当期利益:550,759百万円(前期526,133百万円から+4.7%)
- セグメント別:コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの全セグメントで増収
- 2027年3月期の会社予想:売上高7,500,000百万円(+6.6%)、営業利益1,100,000百万円(+5.5%)、親会社帰属当期利益560,000百万円(+1.7%)
②株価が安いと言われる要因を整理する——確認できる部分とできない部分
ソフトバンク(9434)の株価が割安に見える理由として、投資系メディアではいくつかの要因が挙げられている。 タダシが確認した範囲では、主な要因は6つある。 ただし、いずれも「〜と言われている」「〜という見方がある」という伝聞の域を出ないものが目立つ。
この6つの要因のうち、決算短信や有価証券報告書の数値で確認できる部分と、そうでない部分がある。 たとえばEPS(1株当たり利益)の推移や有利子負債の水準は、ソフトバンクの決算短信や、金融庁のEDINETの有価証券報告書で、数字として確認できる。 一方で、成長鈍化の評価や親会社とのイメージの波及、高金利環境の影響、AI投資の収益化といった論点は、市場心理や将来予測の色が強い。 こちらは、公開情報だけでは断定できない部分だ。
「高金利だから」「AI投資の不確実性を市場が警戒している」——こういう説明は、聞けば納得しやすい。 ただ、納得しやすいことと、公開情報で裏が取れることは、別の話だ。 ここは正直に、「断定できない」と書いておきたい。
だからこそ、鵜呑みにせず、一つずつ確認しておきたい。 次の一覧に、確認できる部分とできない部分をまとめておく。
- ①通信事業(携帯電話サービス)の成熟による成長鈍化——という見方(市場の受け止め方であり、断定はできない)
- ②親会社ソフトバンクグループ(9984)との混同・イメージの波及——という指摘(心理的な要因で、公開情報での裏付けは難しい)
- ③EPS(1株当たり利益)の成長率が低水準だ——という指摘(決算短信・有価証券報告書の数値で確認できる)
- ④高金利環境が株価評価に影響している——という見方(市場全体の要因であり、断定はできない)
- ⑤AI関連投資の収益化が不透明だ——という見方(将来予測であり、現時点では断定できない)
- ⑥財務レバレッジ(有利子負債の水準)への懸念——有価証券報告書・決算短信の数値で確認できる部分
③ソフトバンクとソフトバンクグループ、混同していないか
ここでもう一つ、混同しやすいポイントを確認しておきたい。 ソフトバンク株式会社(証券コード9434・代表取締役社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏)と、ソフトバンクグループ株式会社(証券コード9984)は、名前は似ているが別の上場企業だ。 9434は通信キャリア、9984は投資持株会社で、業種分類も9434が情報・通信業、9984がその他金融業とはっきり分かれている。 株価水準もまったく違うので、証券コードと合わせて見れば、規模感からしても別会社だと分かる。
この「別会社」という位置づけは、9434自身の2026年3月期決算短信にもはっきり出ている。 「業績予想の適切な利用に関する説明」の項では、リスク要因のひとつとして「当社の事業を遂行する上での第三者(ソフトバンググループ(株)ならびにその子会社および関連会社、ならびに当社の主要な取引先および調達先を含みます。)への依存」と明記されている(原文の表記のまま引用)。 9434から見れば、親会社である9984も、法的には「第三者」として扱われている、ということだ。
この対比がいちばん分かりやすく出るのが、株主優待の扱いだ。 ソフトバンク株式会社(9434)は2024年4月25日、株式分割(普通株式1株を10株に、2024年10月1日効力発生)とあわせて、株主優待制度の新設を公式発表した。 1年以上・100株以上を保有する株主に、PayPayマネーライトなどを進呈する内容だ。 一方、親会社のソフトバンクグループ株式会社(9984)は、2019年に携帯電話料金の割引優待を廃止したと、報道や複数の株式情報サイトで伝えられている。 ただし9984自身の一次プレスリリース原文までは、タダシが確認した範囲では見当たらなかったので、ここは「〜とされている」という伝聞にとどめておく。
つまり、子会社(9434)は優待を新設し、親会社(9984)は過去に優待を廃止したとされている。 この組み合わせこそが、ニュースやSNSで「ソフトバンクの株主優待が廃止された」という話を見聞きしたときに、どちらの会社の話か混同しやすいポイントだと思う。 同じ「ソフトバンク」という名前でも、中身は別の会社だ。 「同じだろう」と決めつけず、ニュースやSNSでどちらの話をしているのか、証券コードで確かめる癖をつけておきたい。 気になったときは、ソフトバンクグループ株式会社のIRページを直接開いて、自分の目で確認するのがいちばん早い。
- 証券コード:ソフトバンク株式会社は9434、ソフトバンクグループ株式会社は9984
- 事業内容:9434は通信キャリア(本業)、9984は投資持株会社
- 決算短信上の位置づけ:9434の決算短信では、9984を「第三者」と明記
- 株主優待の方針:9434は2024年に新設(PayPayマネーライト等)、9984は2019年に携帯電話料金優待を廃止したとされる(伝聞)

④配当・株主優待を公式IRで確かめる
ここでは、配当と株主優待を公式IRで確かめておこう。 ソフトバンク株式会社の株主還元・配当ページには、決算期ごとの配当実績と会社の配当方針がまとめて載っている。 この下に置いたスクリーンショットが、まさにそのページだ。
公式ページでは、配当方針についてこう説明されている。 「配当は、中間配当および期末配当の年2回を基本的な方針とし、業績動向、財政状態、キャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案して安定性、継続性に配慮しながら実施していく方針」——ソフトバンク株式会社「株主還元・配当」より。 タダシが確認した範囲では、直近3期の配当は中間・期末とも安定して出ており、具体的な数字は下の一覧のとおりだ。
株主優待の詳しい条件は、同じIRサイトの株主優待ページにまとまっている。 対象になるのは、3月31日から翌年3月31日まで、または9月30日から翌年9月30日までの1年間、100株以上を継続保有している株主だ。 条件を満たすとPayPayマネーライト1,000円分が進呈されるほか、イベントやキャンペーンへの抽選参加の機会も用意されている。 初回は2025年3月31日から2026年3月31日までの保有が対象で、進呈は2026年5月を予定しているという。 株主優待を軸に銘柄を選ぶときの基本的な確認ポイントは、株主優待で銘柄を選ぶのは大丈夫?権利確定と廃止リスクを確かめる基本でも整理している。
ここでもう一つ、注意しておきたいことがある。 公式IRページには、配当利回りの具体的なパーセンテージは載っていない。 株価が動くたびに変わる数字だからで、ネット上で見かける「配当利回り◯%」は、証券会社などが直近の株価から算出した参考値であり、会社の公式発表そのものではない。 最新の利回りは、証券会社サイトなどでそのつど確認しておきたい。 利回りの見方そのものは、高配当株の選び方は大丈夫?利回りの高さだけで選ぶ前に確かめたいことでも整理している。 配当は減っていないし、優待も廃止どころか新設された。 「優待が廃止された」という話を見かけたら、それはたぶん親会社(9984)の話と混同していないか、あなた自身でも一度確かめてみてほしい。
- 2025年3月期:年間8.60円(中間4.30円・期末4.30円)、配当性向78.3%
- 2026年3月期:年間8.60円(中間4.30円・期末4.30円)、配当性向75.8%
- 2027年3月期(会社予想):年間8.80円(中間4.40円・期末4.40円)、配当性向76.2%

独自整理:将来性の見方と、自分で確かめる一次情報の辿り方
国内の携帯電話市場は、ずっと国の政策論議の対象になってきた。 総務省は2018年から2020年にかけて「モバイル市場の競争環境に関する研究会」を開いている。 通信料金と端末代金の分離、接続料の見直し——こうしたテーマが、そこでは検討されてきた。 ここまでは、総務省の公表資料で確認できる公的な事実だ。
ただ、この政策の流れが、今後どう影響するかは別の話だ。 ソフトバンク(9434)の株価にどう跳ね返るかまでは、タダシには断定できない。 この記事は、株価が上がるか下がるかを予測するものではない。 将来性や買い時について、ここで結論を出すことはしない。
政策の方向性そのものは、公的資料で追える。 ただ、それが株価にどう跳ね返るかまでは、タダシには言い切れない。 ここは正直に、「わからない」と書いておく。 同じように「株価はなぜ安いか」を公開情報で確かめた記事に、明治ホールディングス(2269)の株価はなぜ安い?下落要因を公開情報で確かめるがある。 あわせて確認してみてほしい。
- 金融庁のEDINETで、PER・PBR・有価証券報告書を検索する
- ソフトバンク株式会社のIR「決算短信」ライブラリで、直近の数値を確認する
- ソフトバンク株式会社のIR「株主還元・配当」で、配当方針と実績を確認する
- ソフトバンク株式会社のIR「株主優待制度」で、対象条件を確認する
- 見ている情報が、証券コード9434(ソフトバンク株式会社)か9984(ソフトバンクグループ株式会社)か、毎回確認する
判断するときに押さえたいこと
ここまでのチェック項目を、あなた自身の手で埋めてみてほしい。 タダシが公開情報で確認できたのは、業績が過去最高を更新していること、配当は減っていないこと、株主優待は廃止ではなく新設されていること——ここまでだ。 一方で、「株価が安いと言われる理由」の中身には、決算短信や有価証券報告書で裏付けられる部分と、市場心理や将来予測のように断定できない部分が混ざっている。 ソフトバンク株式会社(9434)とソフトバンクグループ株式会社(9984)を混同していないかも、もう一度確かめておきたい。 この記事は特定銘柄の売買を勧めるものではない。 最終的に判断するのは、あなた自身。 ただ、その判断材料を増やすお手伝いだけは、タダシがします。
- 直近の決算短信で、売上高・営業利益・親会社帰属当期利益が実際にどう推移しているか、自分の目で確認したか
- 記事や解説で語られる「株価が安い理由」が、決算短信やIRの記載と実際に一致しているか確認したか
- 見ている情報が「ソフトバンク株式会社(9434)」なのか「ソフトバンクグループ株式会社(9984)」なのか、証券コードで区別したか
- 配当利回りの具体的な数値は、証券会社サイト等で最新の株価をもとに確認したか(公式IRには利回り%の記載がないため)
- 株主優待の対象条件(保有期間・株数)を、ソフトバンク公式IRの最新ページで確認したか
- PER・PBR等の投資指標を、金融庁EDINETまたは日本取引所グループ(JPX)の公表情報で確認したか
- 「必ず上がる」「今が買い時」といった断定的な言い回しに頼らず、自分自身で判断材料を集めたか

タダシ
情報をひとつに絞らず、運営情報・料金・条件をそれぞれ確かめてみてください。判断に迷う点があれば、一緒に整理します。