「もうすぐ上場するこの株、申し込めば儲かるのかな……」 IPO(新規公開株)のニュースを見て、そう思ってここに来たのかもしれない。 先に結論を置く。 IPOは“必ず儲かる宝くじ”ではない。 だが、仕組みを先に知っておけば、過度な期待で飛びつくことも、『IPOで必ず値上がりする』とかたる勧誘に乗ることも、どちらも避けやすくなる。 これがタダシの結論だ。 ことわっておくと、IPO投資そのものを『危ない』と言うつもりはない。 証券会社を通じた正規の新規公開株の申し込みは、ごくふつうの投資行動だ。 ただ、IPOには『抽選』『目論見書』『初値』といった、最初に知っておきたい仕組みがある。 そしてその人気に便乗した、別物の勧誘もある。 順番に、公開情報で確かめていこう。

この記事の要点

IPO(新規公開株)に興味を持った初心者へ。 タダシの結論は『IPOは“必ず儲かる宝くじ”ではない。 仕組みを先に知れば、過度な期待も、IPOをかたる勧誘も避けられる』。 上場とは何か、抽選での配分、目論見書の読み方、初値の値下がりリスクまで、公的機関の公開情報だけで一緒に整理しておきたい。

この記事の目次
  1. そもそもIPO(新規公開株)とは何か
  2. IPO株は『抽選』が基本。申し込んでも必ず買えるわけではない
  3. 申し込む前に読む資料がある——目論見書とEDINET
  4. 初値は『公開価格を必ず上回る』わけではない
  5. ここから別の話。『上場間近・必ず値上がり』とうたう“未公開株”勧誘
  6. 申し込む前のチェックと、迷ったときの相談先
  7. 判断するときに押さえたいこと
  8. 出典・参考情報

そもそもIPO(新規公開株)とは何か

結論を急ぐ前に、言葉の意味から確かめておきたい。

IPOは「Initial Public Offering」の略で、日本語では新規株式公開、新規上場などと呼ばれる。 これまで証券取引所で売買されていなかった会社の株式を、新しく取引所で売買できるようにすることだ。

日本取引所グループの解説では、「『上場』とは企業が発行する株式を証券取引所で売買できるように、証券取引所が資格を与えることをいいます」とされ、「他の取引所に上場していない会社が上場することを、『IPO(新規株式公開)』や『直接上場』といいます」と説明されている。

つまりIPOで買えるのは、取引所の審査を通って、これから公に売買が始まる株だ。 後で出てくる『上場していない未公開株を電話で勧められる』話とは、入口からして別物になる。 ここはまず分けて覚えておきたい。

日本取引所グループの投資教育サイト東証マネ部
投資の基礎は取引所の投資教育サイトでも学べる。(出典:日本取引所グループ「東証マネ部!」)

IPO株は『抽選』が基本。申し込んでも必ず買えるわけではない

ここで初心者がつまずきやすいのが、「申し込めば買える」と思ってしまうことだ。 人気のIPO株は、希望者が公開される株数より多くなりやすい。 だから多くの場合、誰に配分するかは抽選で決まる。

日本証券業協会の自主ルールでは、新規公開株の個人顧客への配分にあたり、「原則として、当該協会員における個人顧客への配分予定数量の10%以上について抽選により配分先を決定するものとされています」と定められている。 これは法律ではなく業界団体の自主規制だが、人気IPOは『抽選で当たった人だけが買える』のがふつうという感覚は持っておきたい。

だから、外れること自体はめずらしくない。 「申し込んだのに買えなかった」のは、あなたのやり方が悪いわけではない。 そういう仕組みだ、と知っておくだけで気持ちはだいぶ楽になる。

  • 抽選が基本:人気銘柄は申し込み多数で抽選になりやすい。外れても普通のこと
  • 証券会社ごとに配分が違う:どの証券会社が幹事かで、扱える株数も申し込み条件も変わる
  • 『必ず当てる方法』はない:当選を保証するうたい文句が出てきたら、そこは一度立ち止まる
日本証券業協会の公式サイト
証券や投資の基礎情報は業界団体の公式サイトでも確認できる。(出典:日本証券業協会 公式サイト)

申し込む前に読む資料がある——目論見書とEDINET

IPOに申し込むとき、その会社のことを「名前と話題」だけで判断していないだろうか。 実は、申し込む前に読める公式の判断材料がある。

証券取引等監視委員会(金融庁)の解説では、「目論見書は、投資をされる皆さんにとって投資しようとする有価証券の重要な判断材料を提供するものです」とされ、有価証券を取得させる場合には「目論見書をあらかじめ又は同時に、投資家に交付しなければなりません(金融商品取引法15条2項)」と説明されている。

目論見書には、その会社の事業内容・業績・リスク・資金の使いみちなどが書かれている。 さらに、上場前に提出される有価証券届出書などの開示書類は、金融庁の開示閲覧システムEDINET誰でも確認できる

全部を読み込むのは大変でも、少なくとも『何をしている会社か』『どんなリスクが書かれているか』だけは目論見書で確かめておきたい。 話題性だけで申し込むより、ずっと自分の判断で動けるようになる。

金融庁EDINETの開示書類検索ページ
企業の決算や有価証券報告書は開示閲覧システムで確認できる。(出典:金融庁 EDINET)

初値は『公開価格を必ず上回る』わけではない

IPOというと「上場初日に値上がりして儲かる」というイメージが先行しがちだ。 たしかに公開価格より初値が高くつく例はある。 ただ、それは『必ず』ではない

金融庁は未公開株の勧誘に関する注意喚起の中で、株価について「さまざまな要因により変動するものですので、将来の動きを正確に予測することは不可能です」と明記している。 これは上場が決まった株でも変わらない、ごく当たり前の前提だ。

初値が公開価格を下回ること(いわゆる公開割れ)も実際に起きる。 『IPO=必ず儲かる』ではなく、値上がりも値下がりもある投資だ、という地点に立っておきたい。 期待値をここで一段、現実に寄せておくことが、後で出てくる甘い勧誘への耐性にもつながる。

ここから別の話。『上場間近・必ず値上がり』とうたう“未公開株”勧誘

ここまでは、証券会社を通じた正規のIPOの話だった。 ここから先は、その人気に便乗した別物の勧誘の話に切り替える。 混ぜないでおきたい。

金融庁は、「『上場間近』、『値上がり確実』、『発行会社との強いコネにより入手』、『貴方だけに特別に譲渡します』などと称して未公開株の購入を勧められ」るトラブル相談が増えていると注意喚起している。 そして「実際には上場する予定がないにもかかわらず、上場予定と偽った勧誘や発行会社自体が架空のものであるなど詐欺的なものが多発しております」としている。

日本証券業協会も、未公開株をかたる詐欺について「『必ずもうかる』『必ず上場する』『あなただけ特別にご紹介』『高値で買い取る』など」のセールストークが使われると解説している。 さらに金融庁は、「未公開株の販売等を行うことが出来るのは、当該未公開株の発行会社や登録を受けた証券会社に限られます」と説明し、それ以外の者からの勧誘には十分注意するよう呼びかけている。

整理すると、正規のIPOは取引所と証券会社を通じて公に行われる。 一方、『未公開のうちに特別に譲る・必ず上場して値上がりする』と個別に持ちかけてくる勧誘は、入口がまったく違う。 電話やSNSで未公開株・IPO関連の勧誘を受けた場合の確かめ方は、未公開株・IPOの勧誘は大丈夫?電話やSNSの誘いを公開情報で確かめるで詳しく整理している。 あわせて読んでほしい。

日本証券業協会の未公開株詐欺の解説ページ
日本証券業協会は、未公開株をかたる詐欺の手口を解説している。(出典:日本証券業協会「未公開株詐欺」)

申し込む前のチェックと、迷ったときの相談先

IPOに前向きになること自体は悪いことではない。 ただ、お金を入れる前に、ここだけは確かめておきたい。

そして、もし「これは正規のIPOなのか、それとも未公開株をかたる勧誘なのか」が自分で判断しきれないときは、一人で抱え込まないでほしい。 困ったときは消費者ホットライン188に電話すれば、身近な消費生活センターにつないでもらえる。 投資商品や証券制度に関する相談は金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)、登録を受けた証券会社との取引トラブルは証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)でも受け付けている。

『この勧誘、本当に申し込んで大丈夫かな』と思ったら、案件名・URL・勧誘文のスクショをLINEで投げてほしい。 確認しておきたいポイントは、タダシが一緒に整理する。 最終的に判断するのは、あなた自身だ。

判断するときに押さえたいこと

IPO(新規公開株)は、証券取引所の審査を通った株を、抽選を含む正規の手続きで申し込む——ごくふつうの投資の入口だ。 仕組みさえ知っておけば、過度な期待で飛びつくことも、その人気に便乗した『未公開株・IPO』をかたる勧誘に乗ることも、どちらも避けやすくなる。 まずは目論見書で会社とリスクを確かめ、初値は上がることも下がることもある、という前提に立っておく。 そして『必ず上場・必ず値上がり』という言葉が出てきたら、そこで一度立ち止まる。 答えはたぶん、すでに公開情報の中にある。 最終的に判断するのは、あなた自身。 ただ、その判断材料を増やすお手伝いだけは、タダシがします。

申し込む前の確認リスト
  • その株は証券取引所に上場(または上場予定で正規に公募)されているか。『未公開のまま特別に譲る』話ではないか
  • 申し込み窓口は登録を受けた証券会社か。勧誘してきた相手は登録業者か(金融庁の登録業者一覧で確認できる)
  • 目論見書・有価証券届出書で事業内容とリスクを確認したか(EDINETでも閲覧できる)
  • 『必ず上場』『値上がり確実』『あなただけ特別に』という言葉が使われていないか
  • 初値が公開価格を下回る可能性(公開割れ)も理解した上で申し込もうとしているか
  • 少しでも迷うなら、188・金融庁相談室・FINMACに相談する、と決めているか
運営者 タダシ株選びナビ 運営者
タダシ
編集者から、読むときのひとこと

情報をひとつに絞らず、運営情報・料金・条件をそれぞれ確かめてみてください。判断に迷う点があれば、一緒に整理します。

出典・参考情報